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男前な彼-8
もやもやしながらも寿司がうまく、意外と食べ切れてしまうかもしれないと思いながら、何個も口に運んだ。
顔は動かさずに視線だけ翼に向けると、翼も黙々と食べている。
目の前に座った父さんはのんきに酒を飲んでいて、珍しく母さんも美香さんもビール缶を開けていた。
「そういえば、翼と航大くんはどう? ふたり暮らしさすがに慣れたよね?」
とりあえず空腹を満たそうとみんながばくばく食べている中、良い感じに酔ってきた美香さんが、目を輝かせながら聞いてきた。
最初に翼と暮らす話が出たとき、俺が場合によっては4年間面倒を見ることができないかもしれないと伝えたから、この返事次第で美香さんも思うことがあるのかもしれない。
どことなく、楽しいと言ってくれと、そんな期待を感じる。
「慣れたも何も、翼がご飯を作ってくれるからありがたいわ。俺、翼と暮らし始めてから全然料理しなくなったもん」
ひとり暮らし歴も長かったから、一通りの家事はこなせるし、自炊もしてきたほうだったけれど、今では翼に胃袋を掴まれてしまっている。
「え、翼、料理できるん?」
小春が隣から身を乗り出し、翼を驚いた様子で見つめた。
「あんた料理できたっけ? いつの間に練習したの?」
「……うるさい」
小春の言葉に、翼の顔が真っ赤に染まる。
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