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男前な彼-10
だんだんと追い詰められていくような雰囲気に、あははと乾いた笑いしか出さずにいると、さっきまで固まっていた翼が箸を置いた。
「……俺としては航大がいてくれるだけでいいんで。それ以上何かしてほしいことはありません」
「はあ!?」
何を言い出すかと思ったら、全員に誤解されるような発言に思わず立ち上がった。
それってさ、それってまるで……。
「プロポーズみたいじゃん!」
俺の心の声に被せるようにして、母さんが声を上げ、それから立ち上がった。
いやなぜ立ち上がる必要がある?
翼の発言に混乱していたのに、今度は母さんのリアクションまで気になってしまい、あっちもこっちもで忙しい。
それなのに翼は、その場を収めることなく、「……まあ、はい」と頷いている。
「えっ……はいって言ったの!? はいって、どういうこと!?」
立ったままの母さんが身を乗り出し、テーブルに両手をついた。
翼が誤魔化せないような圧をかけていく。
父さんも口を開けたまま固まっていて、美香さんは、これでもかというほどに目を開き、口元を手で隠している。
隣の翼を見ると、何か覚悟を決めたような、そんな表情をしていた。
……なあ、まさか今ここで言ってしまうのか?
翼にやめるよう手を伸ばしかけたとき、小春が俺の服を掴んだ。
思わず振り返ると、首を横に振り、何もするなとそんな目で俺を見る。
もしかして、ふたりで話していたのってこれのことか?
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