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男前な彼-11

「俺、ずっと航大のこと、恋愛として好きで。だから無理言って一緒に住みたいって頼んだんだ」  さっきまで顔を真っ赤にしていた翼は消え、落ち着いた表情と少し低めの声で話し始めた。  既に知っている事実だけれど、このメンバーの前で言われるとは思っていなかったから、立ち上がったままどうすれば良いか分からず、俯くことしかできない。 「航大は何も知らないときから一緒に暮らすことを受け入れてくれたし、俺の気持ちを知った今も、追い出さないでそばに置いてくれてる」  変わらず小春は俺の服を掴んでいる。母さんが座る音もしないから、俺と一緒でまだ立っているんだろう。  父さんと美香さんの顔は、見ることができない。 「俺的にはこれがかなり嬉しくて。航大にはそれ以上のことを求めるつもりはないし。すごく良くしてもらってると思う」  顔を上げて話しているだろう翼は、どんな気持ちで言葉にしているのか。  俺と一緒に帰れるか分からないと言っていたのは、どこかのタイミングでこの話をするつもりだったから?  だとしたら絶対に今を想定はしていなかったはず。こんな急に振られて動揺しただろうに、落ち着いて話す声を聞いていると、改めて翼の覚悟を感じる。  俺とどうこうならなければ、本来はうちの家族に伝えなくて良かった話だ。  何を言われるか分からないのに。  それに比べて俺は……と思いながら、顔を上げて翼を見ると、その横顔にどきりとした。  瞬きもせずに真っ直ぐ前を見ていて、まだギリギリ10代のくせに、俺より大人じゃないか。

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