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男前な彼-12
「今後もし何かあったとして、一緒に暮らさなくなったとしても、それは全部俺のせいで、航大に悪いことはないから。それだけは言える」
翼が全てを言い終えると、立ったままの母さんが大きく拍手を始めた。
父さんはうんうんと頷き、美香さんは泣いている。
翼の話の余韻に浸る間もなく、自分のこれからをどうすべきか考える余裕もないまま、親の反応に全てを持っていかれてしまう。
「……待って待って! それじゃあ本当に航大くんが婿になるってこと!? いや、翼が婿……!? えっ、どうしよう! 楽しくなってきちゃった! 翼の見る目がありすぎてお母さん嬉しい!」
泣いている美香さんに、母さんがティッシュを渡す。美香さんはそれを受け取ると涙を拭き、思い切り鼻を噛んだ。
「あのクソ浮気女みたいな女より、こんなにずっとうちの息子のことを思ってくれていた翼くんのほうが良いに決まってるわ。もう絶対に結婚も無理だし、恋愛運死んだと思ってたけど、こういう素敵な縁が身近にあって良かったね」
母さんは興奮冷めやらぬ様子で、一気に喋り倒すと、ようやく椅子に座り、お茶を流し込んでいた。
「お前の好きにしたら良いんじゃないか? 父さんは昭和生まれにしては、考えが柔軟だろ? はっはっは!」
最後に酔っ払ったのか、そうじゃないのか分からない反応の父さんが締め、よく分からない雰囲気のままで食事が再開されそうな雰囲気になる。
待って……、これもう両家顔合わせになってない?
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