「てかもう結婚じゃない？」 「はあ？　付き合ってもないのに何で結婚になるんだよ」 　和田の言葉に酒を持っていた手が止まる。この間からみんなプロポーズだの結婚だの、そんなことばっかり言いやがって。 　やっぱりイライラして、すぐに酒を口に含んだ。 　自分で付き合ってないと答えたくせに、本当に付き合ってないのか分からなくなる。 　付き合っているようなことは既にしてしまっているし、何なら一緒に暮らしてもいる。 　でも俺が告白したことはないし、翼にも付き合おうと言われたことはない。 「じゃあ付き合えば？」 「逆に何で付き合えないの？」 　畳み掛けるようにふたりに質問を投げられ、また黙って酒を飲み続けた。 　どうして付き合えないのか。 　付き合うって言われていないから？　じゃあ俺が言えばそれで済む話なのか？　それこそ翼は、付き合う過程をすっ飛ばして、公開プロポーズまで決めてしまったというのに。 　俺が翼への好意を認めて、それで進んでいけば良いの？ 　……翼と深い関係になって、その先はどうすれば？ 　ふたりで末永く幸せに暮らしました、めでたしめでたし、になれるか？ 　俺は何が不安なんだ？　何が引っ掛かってる？ 「本当に何もしてないの？　キスくらいはしたでしょ？」 　ふたりを無視して勝手に考え込んでいる中、突然耳に入ってきた「キス」という言葉に、思わず酒を吐き出してしまった。