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男前な彼-17

 どのくらい時間が経ったのか分からないけれど、肩を揺すられる感覚がした。  しばらくの間の記憶がないから、もしかして寝ていたのもしれない。  渡された水を手に取り、一気に流し込むと、気持ち程度にすっきりしたように思えた。 「航大、帰るよ」 「……ん?」  中川と和田は、いつから俺を下の名前で呼ぶようになったっけ?  ぼんやりとした意識の中でそんなことを考えていると、「やーん、翼くん素敵!」という、和田の声が聞こえた。    ……翼くん、素敵? 「えっ!」  何かのスイッチが入ったように、意識が戻ってくると、俺の肩に触れたままでいる誰かを振り返って見た。  俺の聞き間違えではなかったようで、そこには本当に翼がいて、少しムッとした表情で俺を見ている。  どうしてここにいるんだ? 「連絡もらったから迎えに来たんだよ。何でこんなに飲んでんの?」  状況を把握できつつあっても、身体が思うように動かさない俺を上手に支えて立たせると、翼は軽々と俺をおぶった。  そこまで体格差がないのに、どうしてこんなことができるんだと思いながらも、同期の前でこんなことをされてしまい、またネタにされると怯える。  ふたりの顔を見ることができない。 「高寺、いつもこんなふうに世話してもらってんの?」 「……誰のせいで」

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