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可愛いと思ったら負け-1

 翼と暮らし始めて一年が経ち、そのタイミングが翼の誕生日とも近かったから、一緒に祝うことにした。  4月生まれだから、翼はもう20歳だ。 「誕生日プレゼントは何が良い?」  節目の年だから、それなりの物をあげようと思って尋ねると、翼はしばらく考え遠慮がちに「1日だけ何でも言うことを聞いてほしい」と言われた。  20歳の誕生日を盾にお願いするなんて、どんなことだ? と想像し、もしかしてと頭の中をいやらしい映像が駆け巡る。  それを込みで了承しないといけないのかと構えていると、「1日だからね。1回じゃないんだよ」と念押ししてきた。 「……ちなみに、どんなお願い?」  恐る恐る尋ねると、翼は両手を広げ、「ハグしてほしい」と答える。  え? そんなこと? いつも勝手にしているのに? 「それくらいでいいの?」  俺から距離を縮め、翼の胸の中に飛び込み、背中に腕を回した。ぎゅうっと力を込めると、翼は俺の首筋に顔を埋め、そこにキスを落とす。 「はあ、嬉しい」 「これが?」 「うん。当たり前」  そこから徐々にエスカレートしていくのかと思いきや、次のお願いごとは「初めてのお酒を一緒に飲んでほしい」だった。  むしろ言われなくてもそのつもりだったんが? と思いながら頷くと、翼は顔をくしゃりとして笑う。

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