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可愛いと思ったら負け-3

「てか、もしあの日に飲んでたら、俺と初めての酒は飲めなかったからな!」  それはそれでお前が困るだろ! と叫ぶと、翼は穏やかに笑いながら「感謝してるよ」と呟いた。 「どうだか」  翼に背を向け、出かける用意を始めると、「機嫌を直して」と後ろから抱きしめられる。  別に機嫌が悪いわけではないと、翼の手を振り払おうとしたけれど、耳を噛まれたせいで一瞬力が緩み、翼が有利になってしまう。  こうなるとどうしたって翼の腕からは抜け出せない。大人しく抱きしめられていると、そこにつけ込むかのように、翼の触り方がエスカレートする。 「翼! やめ、ろって、」 「航大はあの頃から俺のことが好きだったんだ? 松山先輩に嫉妬してたんだね?」  お腹側から服に手を入れられ、そのままゆっくりと胸のほうへと上がり、乳首を摘まれた。  びくりと身体を逸らすと、その反応を見て翼が笑う。 「別に好きとか言ったことないじゃん。勝手に解釈するなバカ」  服の中に入ってきた翼の手を掴み、手首に思い切り爪を立てると、さすがに俺が怒っていると分かったのか、あっさりと手を離した。  それでも触れられた感覚が残っていて、ムカつく。好き勝手しやがって。  俺は振り向いて翼の正面に立つと、服の上から翼の乳首めがけて指を突き刺した。  感触的には位置は合っていたはずなのに、翼は「ん?」と笑いながら俺を見ている。 「仕返しのつもり?」 「そうだよ、悪いか」 「じゃあ直接触らないとね」

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