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可愛いと思ったら負け-4
翼は着ていた服を首の辺りまで捲り上げた。いつでもどんなふうに触られても構わないというその余裕さに、さらに腹が立ってくる。
翼が予想しない形で仕返ししなければと、俺は翼の乳首に噛みついた。
「え?」
頭上から驚いた声がしたけれど、特に動揺している様子はなく、これでも効かないのかよと唇を離すと、今度はすぐに頭を押さえつけられ、「噛まないで、舌で転がして」と指示される。
舌で転がす? こうか……? と素直にそれに従っていると、途中で嵌められたことに気づいた。
今度こそ翼から離れ、口元を拭う。
「気持ちよくするためにしてないから! バカ!」
「素直に従ってて可愛かったのに」
「うるせえ」
「どうすれば気持ちよくなるか、今度は航大の乳首でやってあげるね」
「いらねえよ!」
せっかく健全で可愛い誕生日になりそうだったのにめちゃくちゃじゃないかと、翼に向かってべーっと舌を出した。
「ふざけてると、酒買いに行かねえぞ」
「あ、それはやだ」
本気で謝る気のないような表情でごめんと言うと、翼は服を綺麗にし、それから財布を手に取った。
「さすがに今日は全額俺持ちのつもりなんだけど?」
翼から財布を奪い、机の上に置く。
「え?」
「誕生日のガキに払わせるわけないだろ」
いいから任せなさいと胸を叩くと、「どちらかといえば、今日は航大のほうがガキじゃない?」とクククと笑われた。
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