「航大は俺のこと、一度も可愛いって思ったことない？」 「……さ、さあ？」 　抱き寄せられる力が強くなり、キスをしようとしなくても唇がぶつかる距離まで近づけられた顔に戸惑いながら視線を逸らしたけれど、すぐに追いかけられ、あっという間に捕まってしまう。 　 　視線を逸らすこともできなければ、キスを拒むこともできず、されるがままにキスを続ける。 　段々と気持ち良くなり、翼に支えてもらわないと立つことも難しいくらいだ。 　前に翼に触れられたからか、快楽の閾値が下がったのか、身体が敏感になっているように思う。 「今日は俺のこと、さすがに可愛いって思ってたでしょ？」 　それなのに、キスの合間にそんなことを言うから、ますます翼のことしか考えられなくなる。 　思い返してみたら、これまでの生活の中でも時々翼のことを可愛いと思っていたし、今日に至っては時々どころかずっと思っていたかもしれない。 「知ってる？　可愛いって思ったら負けなんだよ」 　さらに強く腰を寄せられ、翼のキスも深くなる。俺も自然と口を開いてしまい、自ら翼の舌を求めた。 　ゆっくりと侵入してきたそれは、俺のに絡められ、側面の気持ち良いところを擦るように動く。　 　みっともなくこぼれる唾液を気にする余裕もなく、甘い声が漏れた。 　さっきまで弱い力で翼の胸板を押していたはずの俺の手は、今は無意識に翼の服を掴んでいて、むしろ離れたくないとそう伝えているようだった。