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可愛いと思ったら負け-9
「俺はね、航大のこと、可愛いって思い始めたら止まらなくなる」
「……んっ、」
「今も、すごく可愛いと思ってるよ」
「……はあっ、」
翼は最後に啄むようなキスをすると、俺の腰に手を回すのをやめた。
どうして? と離れた手を追いかけると、ぐっと引っ張られ、バランスを崩す。
そのままきれいにソファへと押し倒された。
「……航大は? 俺のこと可愛いって思ってくれないの?」
最近、翼の身体が以前よりがっしりしたように思う。俺を支える腕も太いし、身体の厚みも増した。
だから逃げられない。俺が拒否しないからとか関係ないんだと、無駄な言い訳を頭の繰り返す。
「航大、好きだよ」
「……んく、」
ちう……と首筋に吸い付かれ、最後にそこに痛みが走った。さすがにキスマークを付けられたのだと分かる。
俺の上に跨る翼を見ると、自分で付けた赤い印に視線を落とし、嬉しそうに口角を上げていた。
こういうのも、こういう翼ですら、正直俺は可愛いと思ってしまっている。
「翼……っ、」
最初に俺に気持ちがバレたときは、あんなに焦って取り乱していたくせに、今は俺が本当に嫌がらない絶妙なところで積極的に押したり、気持ちを伝えることに迷いもなくなっている。
俺が言い訳に使おうとしているだけで、結局のところ力づくでどうこうされたことだってない。
それでも、期待を滲ませた表情でさっきから俺を見ていて、GOサインを出せば、飛びかかってくる大型犬のようだ。
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