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可愛いと思ったら負け-11

「バンザイして」  言われるがままに手を伸ばすと、グッと掴まれた服はすぐに脱がされ、床に落ちていった。  翼もすぐに服を脱ぎ、鍛えられた身体が一気に視界に入る。  いつもなら恥ずかしさや気まずさがあるのに、どうしてか触れたくなって、俺は翼へと手を伸ばした。  今日はどこまで進むんだろう。もう俺のに触られて終わり、ではなくなる?  ソファが自分の身体の重みに合わせて沈んでいく感覚に浸っていると、翼は俺の手を引っ張り、今度は俺が翼に跨る姿勢に変わった。    ちゅっと軽く唇に触れられ、それから首や胸にキスを落とされる。  服を脱がせたくせに、それ以上に触らない翼に、少しもやもやとして、俺は自ら翼の唇に自分のそれを押し付けた。  境目を舌先で舐めるけれど、翼は口を開けてくれない。  ……どうして?  翼を見ると、どう見ても欲情して息が上がっているのに。 「翼……?」 「今日はもう止まれないと思う。航大が自分の意思で良いよって言わない限り、手が出せない」 「……っ」  ここまで来て、俺から言わないといけないのかと、これまでとは違う緊張感が走った。  でも、俺がこれだけ躊躇してしまうことを、翼のほうが怖かっただろうに、ずっと伝えてくれていたんだな。 「……負けでいい。翼に流されたけど、溺れるところまで流されるかは、俺が決めた」 「えっ……」 「だから、口開けて」  両手で翼の頬を包み込み、自ら視線を合わせると、翼の頬が一気に赤く、そして熱くなった。  自分から言っておきながら、実際に俺が認めるとは思っていなかったようだ。

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