そもそも翼が華を家に上げなければ、こんなことになっていなかったかもしれないのに、自分の行動を棚に上げて俺を責めるのか？　小春を使って？ 「てか何でこんなことを妹に言わないといけないんだよ」 　こういう話をしたくなかったから、電話に出ないようにしたのに。小春は何の意図があって、この話を掘り返すんだ。 「……翼から全部聞いてんのか？」 『全部が何を指してるのかは分からないけれど、少し前は航大と両想いになったかもって喜びのメッセージが届いたのと、ときどき航兄の間抜けな写真が、可愛いって言葉と共に送られてきたくらいだよ』 「何それ、聞いてないんだが」 『それなのに数日前に、もう一緒に暮らせなくなった、出て行かないといけないって、メッセージが来てたから、電話したら、泣きながら出て行きたくないって言うからさあ……』 　やっぱりこれが本題で狙いだったのか。あのとき俺が帰って来ないのかと尋ねて、自らそうだと言ったくせに？ 「で？　それを小春に言えってか？　自分で言わずに小春を使ったってこと？」 『いや、そうじゃないよ。私が翼が可哀想になって勝手に航兄に連絡しただけ。翼がこんなこと頼むわけないじゃん』 　そうだとして、小春が黙ったまま聞くだけの性格ではないと、翼も知っているのだから、こうなることは予想できたはずだ。