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どうしてこうなった-17

   小春がどんなに翼を庇おうとしたって、俺のこのイライラは小さくならない。むしろ増しているくらいだ。  足先でトントンと床を叩き、髪の中に手を入れるとぐしゃりと握った。   「俺は言ったんだよ。戻って来ないのかって。そしたらあいつが戻らないって言ったんだ。長く友達の家にいるのも厳しいんじゃないかって聞いたら、自分に好意があってデートに誘われることもある女の家に行くからって、だから戻らなくて大丈夫なんだとよ」 『それは翼が悪いけど、本心じゃないのは分かるでしょ?』  小春に伝えながら、あのときの場面を思い出し、嫌な気持ちがよみがえる。俺がどんな気持ちになるか分かっていて、ああ言ったんだぞ。  本心じゃないから何だ? 何を期待したのか知らないが、自分が良い思いをするために俺を傷つけるのは違うだろ。 「さっきから翼が悪いけどってちょいちょい言いながらも、庇ってる感じ出すけどさ、実際にそれで俺は傷ついてんだよ」  頼むから放っておいてくれと、そう言って電話を切ろうとしたけれど、何の勘なのか、『切ったら今度は美香さんに言って、美香さんから電話させるよ』と小春に言われた。  母さんを使ってまでこの電話をしてきているのだから、美香さんを使うというのも、本当にそうするつもりなのだろう。 「はあ……本当にさあ……」 『とはいえ、航兄だって珍しく私に対してこんなに早口で話し続けるくらいに、動揺してるってことでしょ? 翼だって同じだよ』 「……はあ?」

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