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どうしてこうなった-23

「……いいなあ。これだけ一途に思ってもらえるなんて、羨ましい。私、ずっと翼のこと好きだったよ。今日は来てくれてありがとう。来週からも、これまで通り接してくれる……?」 「はい……! よろしくお願いします」  最後までやりとりを見て、翼の気持ちを知った俺は、その場から動けなくなった。  信じていなかったのは俺も同じだ。結局こうして翼のほうが俺のことを考えて、先に行動に移してくれる。    俺の誠意は……。俺なりの誠意って……。    走って去っていく翼を追いかけることもできずにその場に佇んでいると、ポケットに入れていたスマホが振動した。  止まらないそれが電話の通知だと気づき、すぐに画面を確認すると、翼の名前が表示されている。 「……もしもし、航大!? 今から会えない? 俺、どうしても航大に会って話がしたい」  電話に出ると、息を切らした翼の声が聞こえた。今週も会って話しているとはいえ、こんなふうに俺のことで必死になっている翼の声は久しぶりで、勝手だけれど安堵する。 「……俺も、話したい。ごめん、翼」  声を聞きながらぽろぽろと涙が溢れた。手の甲で押さえるけれど、それじゃあ追いつかないくらい。 「航大、泣いてる? ねえ、どこにいる? 俺が航大のところに行くから」 「……たぶん、そのまま後ろを向いて、戻って来てくれたら俺がいると思う。改札の前だから」 「え? 何で?」 「俺も翼と話したくて、勝手に松山さんとの待ち合わせ場所に来てた」 「……分かった、動かないでそこにいて。俺が行くから」  翼は電話を切らないままで、こちらに向かってきてくれているのか、駅の雑音がスマホから聞こえていた。

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