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どうしてこうなった-26
「俺だって翼の喜ぶ顔を見たいし、そういう思い出も作りたいんだよ」
「……分かったよ、テーマパークに行こう。ひどいこと言ってごめんね。俺も航大のこと、変に気遣うのはやめる。嫌なときは嫌だって、教えてくれるもんね」
頷く代わりに、翼の首筋に唇を当てると、「ははは」と笑った翼が、俺の頬にキスをした。
ぶつかる視線が甘くて、少し恥ずかしいけれど、絶対に逸らしたくない。
俺は自ら顔を近づけ、翼にキスをした。角度を変えながら、何度も啄むように重ねる。
最後に首に手を回し、しがみつくようにして身を寄せると、翼の匂いに包まれたからか涙腺が緩む。
ああ、翼のことが好きだなあ……。
「……翼」
「ん?」
ん? と、たった一文字なのに、その音すら優しい。
「……翼のこと、好きだよ。はっきりと言わなくてごめんな」
「はあー……やっと言ってもらえた。誘導してないのに、こんなこと言ってもらえることかあるんだ」
「……ごめんてば」
じゃあもう一度キスしてと、翼が甘えた声を出し、俺の頬に擦り寄る。髪の中に指を入れ、ぐしゃりと触れながら、翼の睫毛、鼻先、それから整った唇にキスを落とした。
愛おしいと思うこの気持ちが、キスからも伝わるように。
「翼は俺のこと、ずっと好きでいてくれる?」
「そんなの、今さらだよ。ずっと航大しか見えてないから」
今日が俺たちの付き合った記念日? と無邪気に笑う翼を、俺は今までで1番強い力で抱きしめた。
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