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溺れて沈む-1

「何だかすごい疲れたな」 「……分かる。勢いがすごかった。でも航大にかっこよかったよ、ありがとうね」  翼と実家に帰省し、両家の親に俺たちの関係を伝えた。  それから新しい家に引っ越す予定であること、翼が大学を卒業した後もずっとふたりで暮らしていくことも。    俺の両親、その横に美香さんが座り、その正面に俺と翼が並んだところまでは良いとして、小春は親の後ろで仁王立ちしていた。  それからまるで、「私のおかげでまとまったな」とでも言いたげな顔をしてずっと見られていたから、それが1番しんどかったかもしれない。  事前に翼が公開プロポーズをしてくれていたおかげで、母さんは「あら、そうなの」くらいだったし、父さんは「引っ越し代は結婚祝いとして出してやろうか」と笑い、美香さんは泣いて喜んでいた。  その点では、翼と一緒になることへの壁もなく、ありがたかったけれど、これからふたりで帰省するのは少し恥ずかしい気もする。 「あー……、でも、何かようやく現実味が……」 「ええ?」 「俺が勝手に夢を見てるのかと思ってたときがあったし。航大が俺のことを好きになってくれる未来が来るなんて思っていなかったし」  翼が俺を見つめながら、フッと口角を上げる。

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