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溺れて沈む-2
「まあ、俺も最初はそんなつもりなかったしな」
正直に答えたけれど、翼はそりゃそうだと言うような顔をして、変わらず俺を見つめていた。
それから、「はあ、すごいなあ」と、頑張った自分にか、俺が翼を好きになった事実に対してか、言葉を漏らした。
「翼の粘り勝ちだよ。流される俺を漂わせるだけじゃなくて、溺れさせてくれてありがとう」
そう言って睫毛にキスをすると、翼が唇を突き出したから、そこにもキスを落とした。
「……でも溺れるだけじゃ弱いかも。沈んで浮き上がらないようにしないと」
「表現が過激すぎだろ」
よくそんなことを思いつくなと笑うと、翼は俺って天才かもと、キリっとした表情をした。
「ははっ」
こんな些細なことですら笑えてしまうくらい、日々が平和だ。
「……にしても、来週引っ越しかあ。俺と航大のふたりの家になるんだなあ」
「家具も家電も入れ替えるしね」
今度の部屋は、ふたりで決めて、ふたりで内見もした。
恋人だと、関係性もしっかり伝えた上で、快く了承してもらえたからこそ、より特別な感じがする。
「お金を多く出させてしまってごめんな?」
「いや、本当に父さんがお金をくれたし、お前が毎月払ってくれていた分も使わせてもらったから、俺のほうこそありがとう」
「俺、まだまだ稼げないけど、翼のこと幸せにするからね」
「はいはい」
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