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05 お姫様になれたね ※R18

「初めてだから、後ろからしようね」 「……ん」 促されるまま、さっきと同じように腰を高く上げさせられて、楓に向かってお尻を突き出す。 恥ずかしい態勢に羞恥心でいっぱいになるけど、期待している自分がいた。 楓の身体が、そっと背後に重なってくる。 じわりと伝わる体温。柔らかさと、確かな重み。 そして―― 「……っ……」 尻の割れ目に、熱を帯びた塊がぬるりと触れた。 ローションのぬめりと一緒に、ゆっくりと前後に擦れてくる感触。 (……えっ、なにこれ。……楓の、でかくない?) 見ていないはずなのに、わかってしまう。熱くて、長くて、重い。 ――それが、これから俺の中に入ってくる……? 「楓……っ、あの、さ……」 思わず声が漏れた。 「大丈夫? 怖い?」 楓はすぐに反応し、優しく問いかけてくる。 「……いや、その……何ていうか、それ……でかいよな……?」 精一杯の冗談めいた調子だったけど、情けないくらい声が震えていた。 楓は笑って、俺の背中にそっと唇を落とす。ふわりとした吐息が肌を撫でて、思わず身じろぎした。 「分かっちゃうか。見せないで正解だったかもね」 ちょっと困ったような声だった。 「僕のおちんちん、あんまかわいくないんだよね。だから、後ろからの方が怖くないかなって思って」 「へ、へぇ……」 嘘だろ、と思った。 あんなにかわいい顔して、ちんこがでかいなんて……そのギャップで、頭がちょっとクラっとする。 てか、見えないままって、それはそれで不安なんだけど……。 「ゆっくり、やさしくするから…」 そう言いながら、楓は俺の腰を片手で支え、ひどく張り詰めたものがあてがわれる。 「──んっ……!」 ぐっと押しつけられた瞬間、ぷちゅ、といやらしい音がして、 ぬるぬるとした先端が、俺の中へとゆっくり押し込まれていく。 「っ……あ、く、ぅ……!」 喉から、情けない声が漏れた。痛いわけじゃない。けれど、馴染まない違和感と、腹の底を押し広げられる不安が混じって、うまく呼吸ができない。 「ごめん、辛いよね……でも、もうちょっとだけ頑張って」 そう言った途端、腰を引いてまた更に奥に沈められた。 「ん、っあ……!」 奥を突かれた衝撃に、声が裏返った。 目の前がチカチカして、体がびくんと跳ねる。 「みつ……全部入ったよ。頑張ってくれて、ありがとう」 耳元に届いた楓の声は、少しだけ震えていて、嬉しさと愛しさが滲んでいた。 きっと、今すぐにでも動きたくてたまらないはずなのに。 それでも俺が落ち着くのを待ってくれてる、その優しさが嬉しくて―― でも。 「……楓、俺はいいから……早く、動けよ……んっ」 強がりまじりの声が合図になったのか、すぐに楓の腕がぎゅっと俺の上半身を抱きしめてきた。 背中越しに伝わるぬくもりと、包み込まれるような圧に、思わず目を閉じる。 ――ああ、幸せだなって。 そんなふうに思ってしまうくらい、楓の腕の中は安心できた。 ぐちゅっ、ぐちゅっ…… そんな音が、俺の身体の奥でじわじわと響く。 楓の熱が、じっくりと俺の中を押し広げながら、少しずつ奥を突いてきて―― 最初はただ苦しくて、必死に耐えるだけだったのに、 気づけば奥のほうを擦られるたび、甘く痺れるような感覚に変わっていた。 「んっ……みつの中、ほんと……気持ちいー……」 耳元に落ちたその声は、いつものかわいらしい楓のものじゃなかった。 低く、熱を帯びていて、掠れた吐息混じりの“雄”の声―― それだけで、背筋がゾクリと震える。 楓が、俺の中で快感に顔を歪めてる。 俺の身体で、気持ちよくなってくれてる。 それがたまらなく嬉しくて、 じわっと、胸の奥が震えた。 「や、やめ……っあっ……! やば……!」 もうすっかり、奥で快感を拾えるようになっていた。 腕に力が入らなくて、シーツに顔を埋めたまま、浅く息を吐く。 そのとき、不意に楓の手が俺の上体をそっと引き起こした。 「ちょ、なにっ……んあっ!」 振り返ろうとした瞬間、楓が後ろから肩を抱きとめる。 くすぐるような吐息が、耳元をくすぐった。 「ほら、こっち。鏡の前で、みつの顔が見たい」 「え……っ」 視線の先――ベッドの横に据え付けられた、大きな鏡。 部屋に入ったとき、やけに存在感あるなって思った。 でも今は、そこに。 俺がいた。 楓に抱かれて、ぐずぐずにとろけた顔で、腰を揺らされて―― 鏡に映る“俺”は、もう自分じゃないみたいだった。 「うそ……やだ、見んな……っ」 「すごく綺麗だよ、みつ」 耳元で囁く声は低くて熱っぽく、興奮のせいか少しかすれていた。 普段はおっとりとした目元が、今はギラついていて――まるで獲物を狙う肉食獣みたいだ。 足は大きく開かされ、ぐずぐずになった結合部が、鏡越しにしっかりと映っている。 奥まで咥え込んだ楓の熱が、ぬるりと動くたびにいやらしい音を立てて、 自分がどれだけ感じているかを突きつけてくる。 恥ずかしくて、見ていられない。 ……のに、目が離せなかった。 「今のみつ、すっごくお姫様みたいだよ」 「……っや、バカ、言うな……!」 「顔も、声も、仕草も。全部えっちで……可愛すぎて、やばい」 「やめろって……っ!」 口では必死に否定しても、鏡の中の“俺”はまるで違った。 うるんだ瞳、荒い呼吸にふるえる肩、半開きになった口元からは涎が一筋、つうっと垂れている。 ――どこからどう見ても、快感に呑まれて、とろとろに抱かれて悦んでいる顔だった。 「もっと見せて。王子様が、お姫様になっていくところ──僕だけに、見せてよ」 「だめだっ……もう、やばい、ほんと無理……っ!」 「光希、僕の“お姫様”になって?」 その一言で、胸の奥に張り詰めていた糸が――ぷつん、と音を立てて切れた気がした。 「あっ、あ……っ! だ、だめ、楓……っ、もう……だめ、イくっ……!」 全身がびりびりと痺れて、熱い楓を咥えている奥が、快感に震えて大きくうねる。 それはもう、自分の意思とは関係ない。 ただ、愛されている――その実感だけで、身体が勝手に悦びをあらわしてしまう。 「っ……! やば……俺も、みつ……っ、イく──!」 楓の声が切羽詰まって、欲望に任せた強い律動が俺の奥を貫いたその瞬間。 視界が、真っ白に染まった。 身体の奥からこみ上げる甘い衝撃に呑まれて、俺は、ただ快感の中に沈んでいく。 ──“みんなの王子様”だった俺は、 その夜、たしかに“お姫様”になった。

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