6 / 256

6

 楷書で、ていねいに書かれた手紙。  心温まる文面だったが、健人は違和感を覚えた。 「どこか、妙だな」  健人は、プロテクターケースに貼られた送り状と、手紙とを見比べた。  手紙は、幼さの残る、楷書。  そして送り状は、達筆な大人文字で書かれている。  手紙と送り状の筆跡が、全く違うのだ。  差出人の住所は暗号化されており、判らなくしてあった。 「さらに、妙だな」  住所は見えなくしてあるのに、氏名は明記してあるとは。 「送り主は、藤崎 圭吾(ふじさき けいご)さん、か。まぁ、偽名かもしれないし」  健人は、もうそれ以上の追及は、後回しにすることにした。  お待ちかねのアンドロイドと、早く対面したいのだ。  そこで、緩衝材を手早くケースから出し始めた。  何せ相手は、超・精密機械だ。  ぎちぎちに詰めてあった緩衝材を全て取り出すには、一苦労した。  汗までかいた健斗だったが、中から現れたアンドロイド・由宇の姿に、思わずため息が漏れた。 「なんて綺麗な子だ……」  美しい四肢を曲げた体は、サイトで見た若葉色のシャツと、白の7分丈ジーンズとを纏っている。  白い肌、栗色の髪、珊瑚の唇。 「……由宇くん」  健人が思わず名を呼ぶと、眠るように閉じられていた瞼が、ゆっくりと開いた。  瞳に星が降り、由宇は起動した。

ともだちにシェアしよう!