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楷書で、ていねいに書かれた手紙。
心温まる文面だったが、健人は違和感を覚えた。
「どこか、妙だな」
健人は、プロテクターケースに貼られた送り状と、手紙とを見比べた。
手紙は、幼さの残る、楷書。
そして送り状は、達筆な大人文字で書かれている。
手紙と送り状の筆跡が、全く違うのだ。
差出人の住所は暗号化されており、判らなくしてあった。
「さらに、妙だな」
住所は見えなくしてあるのに、氏名は明記してあるとは。
「送り主は、藤崎 圭吾(ふじさき けいご)さん、か。まぁ、偽名かもしれないし」
健人は、もうそれ以上の追及は、後回しにすることにした。
お待ちかねのアンドロイドと、早く対面したいのだ。
そこで、緩衝材を手早くケースから出し始めた。
何せ相手は、超・精密機械だ。
ぎちぎちに詰めてあった緩衝材を全て取り出すには、一苦労した。
汗までかいた健斗だったが、中から現れたアンドロイド・由宇の姿に、思わずため息が漏れた。
「なんて綺麗な子だ……」
美しい四肢を曲げた体は、サイトで見た若葉色のシャツと、白の7分丈ジーンズとを纏っている。
白い肌、栗色の髪、珊瑚の唇。
「……由宇くん」
健人が思わず名を呼ぶと、眠るように閉じられていた瞼が、ゆっくりと開いた。
瞳に星が降り、由宇は起動した。
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