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第二章 意外に過激?
「由宇くん」
健人が名を呼ぶと、届いたばかりのアンドロイド・由宇は起動を開始した。
何度か瞬きをし、曲げていた手足を少しずつ伸ばす。
その姿に、健人は見蕩れていた。
きめ細かな肌に、人工植毛とは思えない頭髪や睫毛。
そして何より、ヒトそっくりの滑らかな動作に、夢中になった。
「起動スイッチに触れてもいないのに、電源が入るなんて」
家庭用アンドロイドの多くは、舌の裏などの見えない所に、スタートスイッチが隠されているのだが。
「名前を呼ぶことが、起動指令になっていたのかな」
いや、しかし。
もう、そんなことは、どうだっていい。
立ち上がろうとする由宇を、健人は期待を込めて見つめていた。
だがその時、由宇がバランスを崩して、大きく姿勢を崩したのだ。
「危ない!」
とっさに、健人は両腕を広げて彼を抱きとめた。
胸の中に抱く由宇は、華奢だった。
ヒトより頑丈なはずのアンドロイドが、健人にはひどく儚く感じられた。
「だ、大丈夫かい?」
「……ありがとう」
高すぎず、低すぎない音質の、声。
感謝が、健人の聞いた初めての、由宇の言葉だった。
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