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第四章 復讐しましょう
健人のプロポーズ失敗体験を、由宇は笑わずに聞いてくれた。
一気に話して少し息を吐き、冷めたコーヒーを口にした、健人。
そんな彼に、由宇は片手を上げて見せた。
「はい、健人さん。質問があります」
「な、何かな?」
「健人さんのプロポーズが、早急すぎたことは解りました」
「ハッキリ言うね」
「でも、どんな風に断られたのかが、不明です」
「……言わなきゃ、ダメ?」
はい、と由宇は首を縦に振った。
「この際、心の膿は全て出し尽くす方が、精神衛生上よろしいかと」
「確かに、ね」
仕方ない、と健人は正直にその時の状況を打ち明けた。
『え、私が長谷川さんと結婚? 冗談でしょぉ!?』
『いや、本気なんだ。吉井さん、これを受け取ってくれないか!?』
笑っていた美咲だったが、健人が用意していた指輪を出すと、一転して気味の悪いものを見る目になった。
『わ、悪いけど。私、彼氏いますから!』
『え!? いや、ちょっと!?』
逃げるように去って行った美咲を追うこともできず、健人はその場にしばらく立ち尽くしていた。
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