17 / 256

第四章 復讐しましょう

 健人のプロポーズ失敗体験を、由宇は笑わずに聞いてくれた。  一気に話して少し息を吐き、冷めたコーヒーを口にした、健人。  そんな彼に、由宇は片手を上げて見せた。 「はい、健人さん。質問があります」 「な、何かな?」 「健人さんのプロポーズが、早急すぎたことは解りました」 「ハッキリ言うね」 「でも、どんな風に断られたのかが、不明です」 「……言わなきゃ、ダメ?」  はい、と由宇は首を縦に振った。 「この際、心の膿は全て出し尽くす方が、精神衛生上よろしいかと」 「確かに、ね」  仕方ない、と健人は正直にその時の状況を打ち明けた。 『え、私が長谷川さんと結婚? 冗談でしょぉ!?』 『いや、本気なんだ。吉井さん、これを受け取ってくれないか!?』  笑っていた美咲だったが、健人が用意していた指輪を出すと、一転して気味の悪いものを見る目になった。 『わ、悪いけど。私、彼氏いますから!』 『え!? いや、ちょっと!?』  逃げるように去って行った美咲を追うこともできず、健人はその場にしばらく立ち尽くしていた。

ともだちにシェアしよう!