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肩を落とし、両手でコーヒーカップを包んでしまった健人は、さっきより深く息を吐いた。
そんな彼に由宇が言葉を掛けようとしたが、話にはまだ続きがあった。
「その後さらに、私を打ちのめした出来事があったんだ」
健人にとどめを刺したのは、リフレッシュスペースでの女子トークだった。
スペースには社員用の自販機があるので、また缶コーヒーを買おうと思ったのだ。
そこで女子社員の噂話を、健人は聞いてしまった。
『それで、いきなり指輪まで渡されそうになりましたぁ!』
『付き合ってもいないのに、ですか?』
『キモッ! 長谷川さん、ヤバッ!』
『ハイスペックだから、ストックしとこうかな、って思っただけなんですけどぉ』
『確かに長谷川さん、イケメンだし。係長だし、アルファだし、優しいし』
『でも、いきなりプロポーズは非常識よ!』
『適当にアニメの話とか合わせてたらぁ、なんか好かれちゃったみたいでぇ』
『やっぱり、オタク男子は厄介ですね』
『しばらく、近づかない方がいいわよ!』
美咲にプロポーズを断られただけでなく、彼女にそんな裏があったことはショックだった。
さらに、自分がそんな風に、陰で悪く言われるという追い打ちが待っていたのだ。
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