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第五章 ハイパフォーマンス・由宇くん
由宇の働きで、健人は晴れて大富豪になった。
だがしかし。
「どうやって、私がお金持ちだ、ってアピールするんだい?」
金の喜平ネックレスでも身につけて、出社すればいいんだろうか。
「健人さんの会社は、制服ですか?」
「いや。社員個人に任せてあるけど」
「ではまず、高級ブランドのアパレルで固めましょう。今からネットショッピングで……」
「待って、由宇くん」
どんどん話を進める由宇を、健人は止めた。
「それは、明日でいいから。明日、二人で出かけて選ぼう」
「すぐに済みますよ? わざわざショップに行くなんて、タイパが悪いです」
「確かに、そうかもしれない。でも君は、今さっき起動したばかりなんだ」
もうこれ以上、疲れさせたくない。
そんな健人の言葉の意味が、由宇には最初理解できなかった。
「由宇くんが私のところに来てくれた記念日を、ゆっくりお祝いしたいし」
「え……」
「私がホントにお金持ちになっちゃったのなら、お寿司でもとって一緒に食べたいな」
「あ……」
それで、いいかい?
健人の笑顔に、由宇は魅入られた。
素敵な、ヒト。
健人さんは、優しいヒト。
由宇は健人の笑顔を、しっかりと記憶した。
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