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「僕、お寿司を食べるの初めてです!」
「たくさん食べてね!」
高級寿司店『銀寿司』から配達してもらった寿司桶には、色とりどりの美しい握りが並んでいる。
「確か、白身から食べるのが、マナーですよね」
「まぁ、そうだけど。好きなものから、食べていいんだよ」
ここには、気難しい寿司職人の大将はいないことだし。
そんな風に、健人は由宇の考えを解きほぐした。
なにせ彼ときたら、背筋をまっすぐに伸ばして、緊張しているのだ。
そして何やら、ブツブツ言っている。
「醤油はシャリではなく、ネタに付ける。食べる時は、ネタを下にして、一口でいただく……」
「そんなに意識しないで。ほら、私の真似をして食べるといいよ」
「は、はい」
健人は、慣れた手つきで寿司をぱくりと口にした。
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