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「うん、美味しい。さすが、銀寿司の握りだ!」
「お店を、知っているんですか?」
「まだ子どもの頃に、家族で行ったことがあるんだよ」
誕生日や進級のお祝いにと、両親に連れられてくぐった、銀寿司の暖簾。
「威勢のいい声、大将の鮮やかな手つき、父さんと母さんの笑顔……」
懐かしいな、と健人がつぶやくと、由宇が小首をかしげた。
「僕の寿司店に関するデータには、そのような記載はありません」
「そう? じゃあ、今度はお店に連れて行ってあげる」
「ありがとうございます!」
嬉しい予定もできたことだし、由宇は勢いよく寿司を頬張った。
そして、動きを止めた。
ピクリとも動かない、由宇だ。
「ど、どうしたの? 由宇くん!?」
くぴりと喉が動き、口の中を空けた由宇は、眉根を寄せてささやいた。
「この味は……未知です……。は、鼻が、変です。なぜか、涙が出てきました」
「ワサビが、効き過ぎたんだね」
故障ではないと知った健人は、安心して笑顔になった。
(ワサビに反応して、涙まで出るなんて。由宇くんはホントに、高性能なんだなぁ)
そんな風に、感心したりもした。
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