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フォーマルをひと揃い選び終えた由宇は、気分が乗って来たのか張り切った。
「あとは、全てフルオーダーで作りましょう。もちろん、靴も!」
「いや、待って。ちょっと待って、由宇くん!」
毎日、パーティーに出席するわけじゃない、と健人は由宇をなだめた。
「会社で、仕事用に着るんだ。オフィスカジュアルを数点、欲しいな」
「健人さんの業種は、企画デザインでしたね」
「うん。パソコンを使った作業が多いから、着ていて楽な服がいい」
仕事が立て込むと、午前0時を過ぎる残業があるし、会社に寝泊まりすることもある、健人だ。
それを理由に、カジュアルな服を選びたかった。
だがしかし。
「健人さん、それはいけません!」
「えぇっ?」
「遅くまで残業とか、会社に数泊するとかダメです! 退勤時刻は守りましょう!」
「いや、でも」
「だって。……それでは僕が、寂しいです」
これには、健人もくらりと来た。
(なんて可愛いんだ、由宇くん!)
思わず抱き寄せたくなったが、そこはスタッフの目がある。
健人はグッと我慢して、なるべく残業はしない、と約束した。
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