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山のように購入した健人の服は、自宅まで届けてもらうよう手配した。
支払いは、全てクレジットで一括払い。
由宇が素知らぬ顔で健人に渡したそれは、国内外ともに利用限度額無制限の、ステータスカードだった。
「由宇くん、いつの間にあんなクレカを?」
「健人さん、タラバガニとトマトのタリアテッレ、すごく美味しいです」
答えになってませんよ、と健人は少し唇を尖らせた。
今朝見せた、由宇の表情の真似だ。
それでも彼がとぼけているので、健人の方から探るような目を向けた。
「まさか。また由宇くんが、今度はカード会社のシステムにハッキング……」
「健人さん、声が少し大きいです。それより、冷めないうちにランチ食べましょう」
「やっぱり……」
健人は参ってしまった。
絶対にバレませんから、大丈夫。
そう言う由宇の顔には、反省の色が全く無いのだ。
「やれやれ……」
(これは少しずつでも、社会のルールを教えていかなきゃな)
「健人さん、仔牛ロースのグリルフッタネスカソース、とっても美味しいです」
「はいはい」
「返事は、一回!」
「はい!」
逆に叱られてしまった健人だが、それでも嬉しかった。
由宇と一緒に、外でランチを食べている。
それが、何より嬉しかった。
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