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第九章 語りかける筆跡

 美味しいランチを由宇と共に終えた健人は、張り切った声を上げた。 「よし! じゃあ今度は、由宇くんの服を選ぼう!」 「あ、僕の服は適当でいいです」 「えぇ……」  そんな風に言われると、何だかガッカリだ。  だが由宇は、事も無げに喋る。 「健人さんは職場で、吉井 美咲を見返してやるために、高級ブランドを身に着けるわけですが」 「そう言えば、そうだったね」 「僕には、その必要がありませんから」  だから、適当でもいいのだ、と由宇は語った。 「でも、私から由宇くんへの、初めてのプレゼントなんだ」 「プレゼント?」 「うん。せっかくだから、素敵な服を選ばせてよ」 「プレゼント……」  素敵な響きの、言葉。 「健人さんからの、僕へのプレゼント」 「そうだよ。まぁ、お金は由宇くんが、魔法みたいに作ってくれたわけだけど」  プレゼントという健人の心が、由宇に伝わったようだ。  彼は少し頬を染め、はにかんだ笑顔を見せた。 「ありがとう、健人さん」 「じゃあ、行こうか」  二人は仲良く、メンズブティックへと向かった。

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