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「いやぁ。実は、宝くじが当たっちゃって。それで」
由宇がネットバンクをハッキングしました、なんて口が裂けても言えない秘密だ。
しかし健人の嘘は、意外にすんなりと受け入れられた。
「うらやましいなぁ」
「それで、ブランド品を買ったんですね」
「当たりくじの売り場は、どこです?」
そして。
「いくら、当たったんスか!?」
羽田の質問に、健人は一瞬とまどった。
金額までは、考えていなかったのだ。
(由宇くんが、1000兆円も作っちゃった、とは打ち明けられないな)
そこで、人差し指を一本だけ、目の前に立てて見せた。
そのジェスチャーに、その場の人間はそれぞれで想像した。
(まさか、たったの1万円じゃないよね)
(羽田くんが、このシャツは7万円もする、って言ってたから……10万円?)
(ハイブランドを、たくさん買っちゃってるから、100万円だ!)
1万、10万、と想像の金額がランクアップしていく。
全員の脳内で、健人が得た賞金は100万円だ、と確定した時、羽田の大声が上がった。
「一等! 一等・7億円、ッスね!?」
ビッグです、グレートです、と羽田があんまり騒ぐものだから、周囲も興奮し始めた。
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