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第十一章 由宇vs.美咲の幕が上がる
「健人さん、お帰りなさい!」
「わぁ、ビックリしたぁ!」
自宅門扉に手を掛けた健人は、突然キンモクセイの木陰から飛び出した由宇に驚いた。
目を白黒させる健人に、由宇は満足げな笑みを寄こしている。
「驚かせようと思って、隠れてました」
「まだ、風は冷たいよ。体に良くないよ」
私をおどかすために、わざわざ外にまで出てるなんて、と健人は由宇をたしなめた。
しかし彼は、目的はそれだけじゃない、と言い返してくる。
「広い庭、ずいぶん野草が伸び放題です。僕、草むしりしてたんですよ?」
「冬は、あんまり雑草が生えないから、放ったらかしだったんだ」
「それにしては、かなり年季の入った荒れ方ですが?」
「あぁ……ごめん。独りになってから、ずっと手入れをしてなかったよ」
その言葉に、由宇は口に手を当てた。
そして、ぺこりと頭を下げた。
「ごめんなさい。僕は今、健人さんの心を傷つけました」
「いいんだよ。気にしてないよ」
「ホントですか?」
「うん。私はもう、独りじゃないから」
由宇は、今度は喜んで抱きついて来た。
「嬉しいです、僕」
「さ、部屋に入ろう。冷えてしまう」
二人で寄り添い、屋内へ入る。
しっかりと腕を握ってくる由宇のぬくもりは、健人を和ませた。
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