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「マジで、彼ピでもいいかもぉ?」  今現在、美咲が付き合っている彼氏。  母親が地方議員で、その秘書を務めている26歳だ。  いずれは議員選挙に出馬してキャリアを積み、最低でも知事になる、と豪語している。 「ま、親の七光りで、議員にはなれるだろうけどぉ」  将来性のある、エリート・イケメン・アルファ男子。  そんな彼の未来に投資するような気持ちで、付き合っているのだが。 「ケチなんだよね。あいつ」  デートは割り勘、プレゼントは1万円以内。  そのくせ、恩着せがましいことを言うのだ。   『美咲の方がたくさん食べたから、その分多く払えよ』 『嬉しいだろ。高かったんだぞ、これ』 『お返し、期待してるからな』  万事、こういう風なのだ。  美味しいデザートを食べているというのに、美咲の眉間には縦皺が寄った。 「だけど……『由宇くん』って、誰?」  確か健人は、電話口でこう言っていた。 『もしもし、由宇くん? どうしたの?』 『え!? ちょっと、由宇くん!?』  美咲は、滅多に見ることのない、焦る健人の姿を思い返していた。  そして彼は、慌ただしく立ち去ったのだ。 「長谷川さん、独り暮らし、って聞いてるけど……?」  私と長谷川さんの間に、気になる存在が現れた。  そんな風に、美咲は考えていた。

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