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「アルコールを飲まなくて、正解だった……!」
健人はマイカーを飛ばしながら、そう独り言を口にした。
「代行やタクシーだと、すぐに捕まらなかったかもしれないからな」
とにかく、思ったことを一人で喋った。
黙っていると、不安がどんどん膨らんでしまうのだ。
悪い方にばかり、想像が働いてしまうのだ。
由宇に、バグが生じたのではないか。
由宇は、ウィルスに襲われたのではないか。
由宇が、動かなくなっているのではないか。
由宇に、由宇は、由宇が……!
「由宇くん、どうか無事でいてくれよ!」
すっかり失念していたが、彼は中古でうちに来たのだ。
まずは動作確認や、バッテリー容量、記憶媒体のチェックをするべきだった。
だが、後悔しても遅い。
今の健人にできることは、一分一秒でも早く、由宇の元へと駆け付ける。
それだけなのだ。
「とにかく早く! 急いで!」
焦る心を抱え、健人は車を走らせた。
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