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「由宇くん!」
門扉は開け放したまま、スリッパも履かずに、健人はバタバタと屋内へ進んだ。
床に倒れているのでは、と悪い想像をしていたが、由宇はリビングのソファに体を預けていた。
「由宇くん、大丈夫か!? 横になってた方が、いい!」
「健人さん……健人さん!」
首を跳ね上げ、由宇は立ち上がった。
すぐに健人へ駆け寄り、その体に飛びついて来た。
「あぁ……健人さん……」
「どこか、悪いのかい? すぐに、メンテナンス業者へ連絡しよう」
しかし、それには応じない、由宇だ。
「平気です。もう、すっかり良くなりました」
「えっ? だけど……」
「僕なりに自分を分析した結果、これは吉井 美咲に対する、ジェラシーだったようです」
ジェラシー、と健人は由宇の言葉をそのまま繰り返した。
「すみません、健人さん。こんな稚拙な感情を、コントロールできないなんて」
「いや……ちょっと、嬉しいかも」
「僕が嫉妬心を抱いたことが、健人さんには嬉しいんですか?」
「うん。まぁ、ね」
由宇を抱きしめていた両腕をほどき、健人はにっこり微笑んだ。
「ミルクティーでも、淹れるよ。温まって、話をしよう」
「僕がやります」
「いいから、君はゆっくりしてて」
元のように由宇をソファに掛けさせると、健人はお茶の用意を始めた。
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