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湯を沸かす間、茶葉を蒸らす間、ミルクを入れて弱火にかける間。
そして、沸騰直前に蓋をして蒸らす間。
健人は由宇に、今夜の美咲について報告した。
「参ったよ。とにかく、よく食べてよく飲んでよく喋るんだ」
「何だか、元気そうですが」
「そうなんだ。あ、でも。実は無理してる、って言ってたなぁ」
「無理に元気そうに振舞ってる、ということですか?」
「彼女に言わせると、そうらしいよ」
でも、と健人は温かなロイヤルミルクティーのカップを、由宇に勧めた。
「あの様子じゃ、大丈夫なんじゃないかな。由宇くんの方が、ずっと心配だったよ」
「お話の途中で呼びつけたりして、ごめんなさい」
「いいんだ。ホントに悩んでいるなら、また彼女の方から誘ってくるだろうからね」
「えっ」
由宇の表情は、一瞬にして曇ってしまった。
そして、少しうつむき加減のまま、小さな声で訴えた。
「できればもう、吉井 美咲と二人きりで会わないで欲しいんです」
「由宇くん、それって」
「はい。ジェラシーの原因は、そこです」
僕以外の人と、二人だけでお食事をする。
僕の知らない、楽しい時間を過ごす。
「そんな健人さんを想像したら、胸が痛んで苦しくなって。……我慢できなくなりました」
「由宇くん」
健人は、由宇が好きだ。
そして今夜、もっと好きになった。
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