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第十七章 危険な二人?
わざとらしく、背の高いイケメン彼氏・高橋 大輝と腕を組み、美咲は健人の前に現れた。
美咲の恋人、である。
どんな人物かと、健人も由宇も、怖いもの見たさのような心地だった。
しかしその彼は、意外にも真面目そうな男だ。
カジュアルでありながら、上品さをキープした服装。
育ちのよさそうな雰囲気を、その身にまとっていた。
「長谷川さん、紹介しますぅ。私の、彼ピです!」
「美咲。人前では、そういう言葉遣いをしないように」
失礼しました、と大輝は会釈した。
「初めまして。高橋 大輝です」
「こちらこそ、初めまして。長谷川 健人です」
いつも職場で、吉井さんにはお世話になっております、と健人も会釈した。
「もう、二人とも固いんだからぁ。それより長谷川さん、その子は?」
美咲は抜け目なく、健人の隣にいる由宇の素性を知りたがった。
それには、きちんと答える健人だ。
「彼は、由宇くん。私の大切な、新しい家族なんだ」
「初めまして、由宇といいます。僕は、アンドロイドです」
由宇の自己紹介に、美咲と大輝は二重に驚いた。
まずは、ヒトにしか見えない由宇が、アンドロイドであること。
そして、その由宇を、健人が『大切な家族』と位置付けていることだ。
「えぇ~!? 由宇くん、可愛いのにぃ。ロボットなのぉ!」
「機械を、家族と呼んでいるのですか?」
失礼極まりない、美咲と大輝の物言いだ。
侮辱された、と解らない由宇では、ない。
だが彼は、顔色一つ変えなかった。
ただ、心の中で二人を軽蔑していた。
(所詮、この程度の器でしかないヒトたち、なんですね)
健人の方は、少しだけ笑顔を薄くした。
「吉井さん。ロボットじゃなくて、アンドロイド、だよ」
それから、と大輝をまっすぐに見た。
「たとえ人工生命でも、由宇くんは温かいハートの持ち主です」
ハッキリと、そう言い切った。
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