85 / 256

4

 大輝は別に、貧しいわけではない。  いや、それどころか、裕福だ。  彼は、代々政治家を輩出している、名士の家の出だ。  父親は弁護士、母親は政治家。  資産価値の高い不動産も持っている、富裕層。 「俺だって、1億くらいの資金は自由に動かせるんだぜ」 「え!? ウソ!」  だのに、どうしてこんなにケチなのか!? (そんなに、お金あるなら! もっと私に貢いでよ、もう!)  驚いたり、不思議がったりする美咲をよそに、大輝は考えを巡らせていた。 「この1億、倍にしてみせる」  それにはまず、あの成金・長谷川を、その気にさせる必要がある。 「美咲。今夜のディナー、長谷川を同席させたい。あいつを、誘い出してくれ」 「何で? お友達になりたい、とかぁ?」 「奴から、金を奪い取ってやる。いい方法が、あるんだ」 「えぇ~!? 犯罪とか、やめてよね」  露骨に嫌そうな顔をする美咲に、大輝は鼻で笑った。 「ふふん。正々堂々と、勝負するさ。男らしく、一騎打ちだ」 「まさか、殴り合い?」 「違うよ。もっとスマートな、紳士の対戦だ」 「えへへ! 面白くなってきちゃったぁ!」  大輝が何を思いついたか解らないが、美咲は胸を躍らせた。  

ともだちにシェアしよう!