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第十八章 アグレッシブ・由宇くん!
『この僕と、1億を賭けた勝負をしませんか?』
挑発的な、大輝の言葉だ。
驚く健人に、彼は悠々とワイングラスを傾けた後、語り始めた。
「僕も、1億ほどの資産は持っています。それを少々、増やしたいと思いまして」
「はぁ……そうですか」
「1億が2億になれば、まぁ美咲にも苦労はかけないかな、と」
それを聞いて、美咲は甲高い声を上げた。
「えぇ~!? それって、どういう意味ぃ!?」
「高橋さんはどうやら、吉井さんと一緒に暮らすつもりのようですね」
そう冷静に答えるのは、由宇だ。
「思うに、高橋さんは遠回しに、吉井さんへプロポーズをしたのです」
「もぅ、大輝ったら! 人前で、ヤだぁ~!」
「いや、あの。美咲には後で、ちゃんと……」
混沌としてきた場を落ち着かせる意味も込めて、健人は大輝に声を掛けた。
年上らしく、まずは彼に思い直すように、だ。
「1億もあるのなら、充分でしょう。大金を賭けて、私と勝負なんかしなくても」
「7億も持っている長谷川さんに言われても、嫌味にしか聞こえませんね」
聞く耳を持たない大輝に、健人は困ってしまった。
ところがそこで、由宇が口を開いたのだ。
「いいでしょう。その勝負、受けて立ちます」
「由宇くん!?」
目を円くする健人を置いて、由宇は話を進め始めた。
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