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「あの、ね! 先にプロポーズされたのは、私だから!」
長谷川さんが、指輪まで用意して、突然プロポーズしてきた。
そう、美咲は大輝に言い訳した。
彼女の言葉に、大輝の怒りの矛先は、健人に向いた。
「それは、本当ですか。長谷川さん!」
とんでもない事の成り行きに、ポカンとしている健人だ。
そんな彼の前へ出るようにして、由宇が代弁した。
「確かに、事実です。しかし吉井さんは、健人さんの申し出を断りました」
ホッとしたのも束の間、美咲と大輝は再び慌てることとなった。
「ですが吉井さんは、健人さんが7億手にしたと知った途端、自分から誘ったのです」
「あ、あれはぁ! 相談に乗ってもらおうと思って、それで!」
「悩みなら、どうして高橋さんに話さないのですか?」
「あ、う、わぁあ!」
「美咲!? お前、まさかホントに!?」
「皆さん、落ち着いて! 由宇くんは少し、お喋りが過ぎるよ!」
修羅場にまで発展してきた空気を、健人が制した。
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