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「高橋さん。私が吉井さんに求婚した時は、あなたの存在を知りませんでした」
大変失礼しました、と健人は頭を下げた。
「それから、吉井さん。あの時の私は、頭に血が上っていたんだ。ごめんね」
健人は美咲にも頭を下げた後、ハッキリと言った。
「今はもう、吉井さんと結婚したいとは思ってないから」
この言葉に、大輝は胸をなでおろし、由宇は目の前が明るくなった。
ただ、美咲だけは、ぷぅと膨れた。
「大勢の前で、言わなくても。私に、恥をかかせる気ですかぁ!」
「ごめん。そんなつもりじゃ……」
「大体! さっきから由宇くんが、何だかキツイんですけどぉ!?」
確かに、暴露の口火を切ったのは、由宇だ。
それは健人も、奇妙に思っていた。
(AIは基本的に、ヒトを傷つけないよう、プログラムされているのに)
そのはずなのに、美咲を吊るし上げるような物言いをしているのだ。
「確かに僕は、無意識のうちに、意図的に吉井さんを攻撃しています」
「何それ。矛盾してない?」
口を尖らせる美咲に、一瞬だけ由宇の瞳が揺れた。
それを見て、健人は彼が心配になった。
しかし由宇は、すぐにしっかりとした口調で、宣言した。
「健人さんには、幸せになって欲しいのです。今の吉井さんは、その妨げでしかありません」
由宇は、考えていた。
考えに考えて、言葉を選んで、自分の思いを口にしていた。
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