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 美咲が、健人の幸せを妨害している。  こんな由宇の宣言に、その場に居合わせた三名の人間は、絶句した。  だが胸の内では、それぞれの思いを口にしていた。 (由宇くん、そんなにハッキリ言わないでも!) (この子、私と長谷川さんのこと、どこまで知ってるわけぇ!?) (美咲が妨げ? どういう意味だ。二人の仲は、深いのか!?)  もつれ合う思惑の糸を解くように、由宇は淡々と語り始めた。  缶コーヒーがきっかけで、健人が美咲に好意を寄せたこと。  美咲は大輝がいながら、ハイスペックな健人をストックしようと考えたこと。  だが思いつめた健人が指輪まで用意したので、恐れをなして断ったこと。 「吉井さんは、これらを女子社員の皆さんに吹聴し、健人さんを笑いものにしました」 「本当か、美咲!?」 「いや、あのぅ。私はぁ、そんなつもりじゃ……」  今まさに、大輝と美咲の仲が危機に陥りかけている。  しかし由宇は、手加減しなかった。  健人のためにと、舌戦を展開する覚悟だった。

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