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第十九章 怒りの美咲
「僕は最初、健人さんに酷い仕打ちをした吉井さんに復讐しようと、考えていました」
大切なユーザーである、優しい健人さん。
彼を苦しめる存在が、許せなかった。
そう、由宇は語った。
だがしかし。
「ですが。吉井さんが、健人さんを二人きりの食事に誘った時から、僕に変化が……」
「ちょっと待て、由宇くん。美咲が長谷川さんと、二人だけで食事を!?」
「はい。2週間ほど前の、金曜日の夜です」
「美咲! あれは女子会だ、って言ってたじゃないか!」
「あ、いや。その、ねぇ?」
「俺の誘いを断って、長谷川さんとデートしたのか!?」
問い詰められた美咲は、ついに逆ギレし始めた。
「だってぇ。大輝とご飯食べに行っても、つまんないんだもん!」
「はぁ!?」
「いっつも、チープなレストランだしぃ! プレゼントくれても、安物だしぃ!」
「だから俺は! もっと金持ちになって、美咲に贅沢をさせたいと思って!」
「何よぅ。1億あるなら、今すぐ贅沢できるじゃない!」
「あの金は、俺の両親や、お爺さん、お婆さん。ご先祖様から受け継いだんだ」
その大切な資金は、今後の大輝が政治活動をする際にと渡されたもの。
遊ぶお小遣いに使うわけには、いかないのだ。
チャラい坊ちゃんとは違う、一本通った筋を、大輝は持っていた。
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