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「なるほど! 高橋さんのご意見は、ごもっともです。素晴らしい!」
美咲と大輝のケンカが大炎上しないように、健人は口をはさんだ。
「でも、由宇くん。さっき『僕に変化が』って、言いかけたね。どうかしたの?」
やはり、一度メンテナンスしてもらった方が良いのだろうか。
健人は、心配だったのだ。
「僕の変化。それは、吉井さんに対する気持ちの変化です」
「私ぃ!?」
さっきから、由宇に色々とマズいことをバラされている、美咲だ。
(確かにちょっと、やり過ぎたかな、って思うけどぉ。まだ何か、あるの!?)
これ以上、立場が悪化するのは避けたいところだ。
しかし、由宇の告白は、美咲を咎める内容ではなかった。
「吉井さんに、復讐するつもりだった僕です。それが、嫉妬するようになったのです」
「嫉妬ぉ? 私に、嫉妬……?」
「はい。健人さんと二人きりの吉井さんに、激しいジェラシーを覚えました」
健人は、由宇の言葉に、静かに耳を傾けていた。
確かにあの夜、由宇は胸が苦しいと電話で訴えてきたのだ。
(そして、いま彼が言うように、吉井さんに嫉妬したと打ち明けたんだ)
それだけでは、ない。
健人が過去に愛した、見知らぬ相手さえ、意識するようになったのだ。
健人と大輝、男二人が何も言えずにキョロンとしていると、美咲が静寂を破った。
「それって、さぁ。好き、ってこと? 由宇くん、長谷川さんのこと、愛してるのぉ?」
「えっ!?」
指摘された由宇の方が、驚いている。
「僕、が。僕、は。健人さんを、愛して……?」
どぎまぎと落ち着きを無くして、うろたえる由宇の姿に、健人もおろおろしている。
その時、大きな笑い声が上がった。
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