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もう我慢できない、という風に吹き出し、大口を開けて笑い出したのは、大輝だ。
「いや、それは! それは、無いだろ! 美咲、エンタメに浸かりすぎ!」
「な、何よぅ。私、変なコト言ったぁ?」
「映画やドラマじゃないんだから。機械が人間に恋するとか、ありえないし!」
大輝に真っ向から否定され、美咲は口を尖らせ、由宇は顔を曇らせた。
「由宇くんは、長谷川さんを好きなんだね。でもそれは、ヒトの愛情とは違うから」
「そう……なん……でしょうか……」
「アンドロイドはユーザーに懐くように、プログラムされてるものだよ」
「懐く……」
「そうそう。あぁ、可笑しい。ッぷ! 思い出したら、またッ!」
ゲラゲラと、由宇を笑い飛ばす大輝だ。
(高橋さん! 正論ですが、それでは由宇くんが可哀想だ!)
憤った健人が立ち上がろうとした時、大輝の顔面に、ワインがぶちまけられた。
「超ムカつく! 大輝、マジ最低!」
怒気を隠そうともしない美咲の手には、空になったワイングラスがある。
彼女が、大輝にワインをかけたのだ。
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