94 / 256

3

 もう我慢できない、という風に吹き出し、大口を開けて笑い出したのは、大輝だ。 「いや、それは! それは、無いだろ! 美咲、エンタメに浸かりすぎ!」 「な、何よぅ。私、変なコト言ったぁ?」 「映画やドラマじゃないんだから。機械が人間に恋するとか、ありえないし!」  大輝に真っ向から否定され、美咲は口を尖らせ、由宇は顔を曇らせた。 「由宇くんは、長谷川さんを好きなんだね。でもそれは、ヒトの愛情とは違うから」 「そう……なん……でしょうか……」 「アンドロイドはユーザーに懐くように、プログラムされてるものだよ」 「懐く……」 「そうそう。あぁ、可笑しい。ッぷ! 思い出したら、またッ!」  ゲラゲラと、由宇を笑い飛ばす大輝だ。 (高橋さん! 正論ですが、それでは由宇くんが可哀想だ!)  憤った健人が立ち上がろうとした時、大輝の顔面に、ワインがぶちまけられた。 「超ムカつく! 大輝、マジ最低!」  怒気を隠そうともしない美咲の手には、空になったワイングラスがある。  彼女が、大輝にワインをかけたのだ。  

ともだちにシェアしよう!