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第二十章 アップデート
『由宇くんの、長谷川さんへの愛情って、ピュアで素敵だな、なんて思ったりして』
『私に嫉妬しちゃうとか、可愛いしぃ。何か、純愛、って感じ?』
思いがけない、美咲の言葉だった。
敵意を持っていた彼女から、由宇は逆に、賞賛をもらったのだ。
そのことに健人は安堵し、心から喜んだ。
(吉井さんは、由宇くんを許してくれたんだ。そして、認めてくれたんだ)
だが、当の由宇は眉根を寄せている。
彼の頭は、混乱を極めていた。
「吉井さんは、僕が嫌いじゃないんですか? あんなに、あなたを陥れることを言ったのに」
「ん~。ちょっと、イラッとしたけどぉ。全部、事実だしぃ」
「でも。でも、ですよ……!?」
うろたえる由宇の手に、温かいものが触れた。
健人の手だ。
小さく白く、華奢な由宇の手のひらを、すっぽりと包み込む大きな手。
優しい健人のぬくもりは、由宇のAIをたちまちのうちに鎮めた。
落ち着きを、取り戻させてくれた。
「由宇くん。人間の心は、矛盾をはらんでいる時もあるんだよ」
「健人さん」
「そして、絶えず変化することができるものなんだ」
その言葉は、由宇の胸に染み入った。
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