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前菜にと運ばれてきた、車エビとホワイトアスパラガスのブランマンジェ。
美咲はそれをフォークでつつきながら、愚痴でもこぼすように言った。
「私だってぇ、お金が全て、とは思ってないよ? 純愛とか、憧れるしぃ」
「お、俺とは!? 純愛じゃないのか!?」
「大輝は、幼馴染の腐れ縁じゃん」
「ひどい……」
大げさに落ち込んで見せる大輝の肩を、美咲はポンポン叩いた。
「捨てないから、安心して。これからも、よろしくね!」
何だか、ほのぼのとした心地になった健人だ。
由宇も安心できたのか、彼の手を握り返して笑顔を見せた。
すっかり打ち解けた空気の中、四人は楽しく食事を始めたが、話題は決まっていた。
「でもぉ。私、お金だって好きだから。由宇くんとの勝負は、ちゃんとやるからね!」
「いいですよ。受けて立ちます!」
「由宇くんが勝てば、私は長谷川さんから手を引く。ただし、大輝の1億は払わない」
「それで、結構です」
「決まり! さ、大輝。何で勝負するのぉ!? ポーカー? それとも、バカラ?」
「早く、教えてください!」
賭けの詳細を詰める美咲と由宇の隣で、健人と大輝はぼそぼそと料理を口にしていた。
「何か、盛り上がってますね……」
「俺たち、置いてけぼりですね……」
情けない男二人だが、健人は大輝の一人称が『俺』に変わったことに、気づいていた。
虚勢を張って『私』と言っていた彼が、距離を縮めてくれた。
そう考えて、嬉しかった。
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