98 / 256

2

 前菜にと運ばれてきた、車エビとホワイトアスパラガスのブランマンジェ。  美咲はそれをフォークでつつきながら、愚痴でもこぼすように言った。 「私だってぇ、お金が全て、とは思ってないよ? 純愛とか、憧れるしぃ」 「お、俺とは!? 純愛じゃないのか!?」 「大輝は、幼馴染の腐れ縁じゃん」 「ひどい……」  大げさに落ち込んで見せる大輝の肩を、美咲はポンポン叩いた。 「捨てないから、安心して。これからも、よろしくね!」  何だか、ほのぼのとした心地になった健人だ。  由宇も安心できたのか、彼の手を握り返して笑顔を見せた。  すっかり打ち解けた空気の中、四人は楽しく食事を始めたが、話題は決まっていた。 「でもぉ。私、お金だって好きだから。由宇くんとの勝負は、ちゃんとやるからね!」 「いいですよ。受けて立ちます!」 「由宇くんが勝てば、私は長谷川さんから手を引く。ただし、大輝の1億は払わない」 「それで、結構です」 「決まり! さ、大輝。何で勝負するのぉ!? ポーカー? それとも、バカラ?」 「早く、教えてください!」  賭けの詳細を詰める美咲と由宇の隣で、健人と大輝はぼそぼそと料理を口にしていた。 「何か、盛り上がってますね……」 「俺たち、置いてけぼりですね……」  情けない男二人だが、健人は大輝の一人称が『俺』に変わったことに、気づいていた。  虚勢を張って『私』と言っていた彼が、距離を縮めてくれた。  そう考えて、嬉しかった。

ともだちにシェアしよう!