99 / 256

3

「それで、健人さん。賭けの詳細ですが」 「うん……。じゃあ一応、聞いておこうかな」  ディナーを終え、ホテルの個室へ戻った健人と由宇。  由宇は張り切っているが、健人の方は、歯切れの悪い応答だ。 「健人さん……すねてるんですか?」 「え」  ずばり言い当てられ、健人は頭を掻いた。  だが、由宇を相手に噓やごまかしは、したくない。  正直に、思うところを口にした。 「だって。由宇くん、吉井さんとばかり、仲良くお喋りするんだから」 「え」  これは、まさか。  もしかすると……? 「健人さん……ジェラシー、ですか?」 「当たり!」  答えるや否や、健人は由宇を胸の中へと引き寄せた。  形の良い頭を撫で、ぎゅっと抱きしめた。 「吉井さんが、由宇くんを奪ってしまうんじゃないかって。気が気じゃなかったよ」 「もう! 困った健人さんですね!」  声が笑っているので、冗談ということはすぐに解る。  それでも、嬉しい健人のジョークだった。 「これで、お相子だ。私も、吉井さんに嫉妬したからね」 「はい……」  抱き合った二人は、そっと静かにキスを交わした。

ともだちにシェアしよう!