104 / 256
3
健人は、不思議そうな表情の由宇に、うながした。
「まぁ、いいから。開けてみて」
「変な健人さんですね」
しかし、開けてみるとすぐに、由宇は健人の真意を悟った。
「あ! これって……!」
「由宇くん、ショップでずっと見てただろ?」
袋の中から出てきたのは、ミントグリーンのキャップだ。
さっそく被ってみる由宇に、健人は笑顔で語った。
「気に入ったんだろうな、って思って。うん、よく似合ってるよ」
「ありがとう!」
ニコニコしていた由宇だったが、ふと気づいたように瞳が曇った。
「ごめんなさい。僕、健人さんへのお土産を買っていません」
「いいんだよ、私の自己満足なんだし。それに……」
「それに?」
「由宇くんの嬉しそうな、その笑顔。何よりのお土産だ」
優しい健人の言葉に、二人を包む空気が温かくなった。
甘い雰囲気に、なってきた。
(さすがに今夜は、由宇くんも疲れてるだろうから)
エッチはお預けにしようと思っていた、健人だ。
しかし、彼の潤んだ瞳を覗き込んでいると、ふつふつと熱い昂ぶりが湧いてくる。
ピンクの唇に、吸い寄せられそうだ。
(キスだけ! キスだけだから……!)
健人が由宇に顔を寄せようとした時、その唇が動いた。
「ところで、健人さん。高橋さんとの勝負は、競馬ということになりました」
「こんなシチュエーションで、そういう話しする……?」
健人は、がっくりと肩を落とした。
ともだちにシェアしよう!

