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 嬉しそうに、明るい声でお喋りを始めた、健人だ。  通話はすぐに終わるかと思いきや、やけに長い。  由宇は健人の隣で、ジリジリしてきた。 (健人さん、ったら。僕との話の途中なのに、長話だなんて)  しかも彼の様子をうかがうと、喜びの他にも様々な表情があるのだ。  それは、優しさや心配、そして包み込むような慈愛。  どれも、由宇に向けられる表情と同じだ。 (瑞紀、と健人さんは呼んだ。何者なんだろう)  そして、久しぶり、とも言っていた。  おそらく、健人の過去に関わる人物だ。  由宇はすぐに、データ検索を開始した。  健人が入社した時からの、社員名簿。  健人が在籍していた大学や高校、中学校や小学校の卒業生たち。  それらの中から『瑞紀』の名を持つ人間を、探し出した。  結果は、もちろんすぐに出た。  宇宙に浮かぶ、由宇と繋がっているスーパーコンピューターが、一瞬にして回答したのだ。  彼のフルネームは『松島 瑞紀』という。  健人が高校生の時に、転入してきた同級生。 「男性で、第二性はオメガ。成績は良いが、小柄な体つきとオメガを理由に、級友からハラスメントを受ける……」  笑い声を立てる健人の隣で、由宇はぶつぶつと瑞紀のプロフィールをつぶやいていた。  これらの情報は、教師が記録した指導要録に残されている。  由宇が瑞紀について一通り理解した頃に、健人の電話も終わった。

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