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第二十三章 過去の恋人と現在の恋人
健人が高校2年生の時、松島 瑞紀は彼のクラスに転入してきた。
男子だが、第二性がオメガということもあって、中学生のように線の細い体つきだった。
愛らしい、幼さを残した顔立ち。
そして、伏し目がちな、おどおどとした仕草。
そんな瑞紀は、すぐにハラスメントの対象として、ロックオンされた。
いわゆる、いじめの標的になってしまったのだ。
「だから私は、瑞紀くんを昼食に誘うようにしたんだよ」
「いじめの加害者から彼を守るため、ですね」
「さすが、察しがいいね。教室を離れて、学生食堂に連れて行ったんだ」
気の優しい健人は、怯え苦しむ瑞紀を、放っておけなかった。
なるべく一緒に行動し、彼の盾となったのだ。
「幸い私の友達も、みんな協力してくれてね。次第に瑞紀くんは、攻撃を受けなくなった」
「健人さん、素敵です! 惚れなおしました!」
「いやぁ、嬉しいね。さっきまで、クッションで殴りまくってたのに」
「はっ! そうでした!」
瞳をキラキラさせて、健人の手を握りしめた由宇だったが、すぐに表情を引き締めた。
健人と瑞紀の恋は、もう終わったと聞いている。
それでも彼は、まだ警戒心を解いてはいなかった。
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